H・テペーニン博士(Dr. Tepenin / 特佩宁博士)
H・テペーニン博士(本名:H(ハヤシノフ)・テペーニン、AD2116 - AD2199)は、旧人類のナノマシン工学者。**ケルバーの発明者にして箱庭世界計画**の提唱者であり、「再生構築機界の造物主」と称される。
ミキシングワールドの物理的・文化的基盤のほぼすべてがその業績に由来し、二大勢力の時代となった現在でも、勢力を問わず大きな尊敬を集めている。

H・テペーニン博士の肖像
プロフィール
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 本名 | H(ハヤシノフ)・テペーニン |
| 種別 | 旧人類 |
| 専門 | ナノマシン工学 |
| 生年 | AD2116(旧ロシア連邦・ウリヤノフスク近郊) |
| 没年 | AD2199(享年83) |
| 主な業績 | ケルバーの発明(AD2177)/箱庭世界計画の提唱(AD2181) |
生涯
幼少期
AD2116年、旧ロシア連邦のウリヤノフスク近郊に生まれる。父はロシア系の分子生物学者、母は日本人であった。5人兄弟の末っ子で、健常児として生まれたのはテペーニンのみ。他の兄弟は虚弱体質で幼少時に死亡している。
AD2121年、5歳のときに両親が離婚する。唯一の健常児として生まれたテペーニンを、父が「自分の息子かどうか」と疑ったためであった。離婚後は母の実家がある日本の埼玉県で育てられたが、母がテペーニンに愛情を示すことはなかった。当時は健常児を生んだ女性に国家から高い社会的地位と生活の特権が与えられており、母にはそれで十分だったのである。
テペーニンは非常に知能が高い少年で、すでに珍しかった健常児として最高レベルの教育を受けたが、臆病で愛情に飢え、他人とうまくコミュニケーションを取ることができず、学校では常に孤独だった。
そんなテペーニンの唯一の居場所が、母の実家の倉庫に残されていた、曽祖父の大量のプラモデルコレクションであった。西暦2100年頃のプラモデルは一部の愛好家のみが好む懐古的な趣味として文化的消失の寸前にあり、少年テペーニンは倉庫の中で小さな人々を配置するディオラマを作ることだけを楽しみとした。この少年期の習慣が、後にケルバーが1/35サイズの小型義体として実装される根本の理由となる。
火星への夢
AD2125年、テペーニン9歳のとき、第一次火星開拓計画が成功し、世間は火星ブームに湧いた。火星に行けば苦しい現状から離れて新しい人生が開けるかもしれないと、テペーニンは火星開拓団への参加を目標に勉学に励む。開拓団の参加条件には過酷な環境に耐える体力が必要だったため、肉体強化トレーニングも始め、生来頑強だった体はめきめきと力をつけた。ただしプラモデル制作は続け、人と話すのが苦手なままだった。
結婚と家族
AD2140年、火星移民船乗組員の選抜条件「既婚者で子供がいること」を満たすため、周囲に勧められるまま結婚。テペーニンは生まれて初めて、人の心にまともに触れる経験をした。AD2142年には息子ゼリックが誕生するが、妻はその出産と引き換えに体調を崩し、入退院を繰り返すようになる。
AD2144年、ついに第三次火星開拓団員として選出される。だが病床の妻の「息子と一緒に地球に残ってほしい」という要望により、苦渋の決断で参加を辞退した。その後まもなく妻は病死し、さらに第三次火星開拓船は乗組員全員が死亡する事故を起こして計画自体が頓挫する。仲間の死と妻の病死を経て、テペーニンは人間の肉体的な脆弱さを克服することへと研究の主軸を移していった。
息子ゼリックとの関係には長く恵まれなかった。誕生日には必ずプラモデルを贈ったが、当時すでに100年以上昔の遺物にゼリックは見向きもせず、仕事以外では部屋に閉じこもってプラモデルを作り続ける父を見下していた。明るくリーダー資質に傑出したゼリックは火星開拓団を目指し、猛烈に反対する父と衝突して生活は荒れた。
AD2164年、ゼリックは大学卒業と同時に結婚する。心優しい妻が両者の間を取り持ち、関係は改善に向かった。ゼリックは宇宙開発系の企業に就職したが、その裏でテペーニンがコネを使っていたのは有名な話である。AD2165年にはゼリック夫妻に息子ゼロアが生まれ、孫の存在は二人をつなぐ架け橋となった。孫と一緒にプラモデルを作る時間はテペーニンの人生最良の時であったと記録されている。
家族の死と人格抽出技術の確立
AD2175年、ラグランジュポイントに建造中だった宇宙開拓プラントの墜落事故に、ゼリックの妻と孫ゼロアが巻き込まれる。妻は即死、ゼロアは脳だけがかろうじて無事だった。テペーニンは当時研究していた最先端の義体に孫の脳と意識情報を移植しようと試みるが、失敗。だがこれがきっかけとなり、脳から完全に人格をスキャン・抽出する技術を確立する。
事故を起こしたプラントはゼリックの勤務先企業が建造していたものだった。ゼリックは罪悪感に苛まれつつも、孫を助けられなかったテペーニンを罵倒し、二人の関係は再び絶たれた。テペーニンはまた研究とプラモデルの世界に引きこもった。
ケルバーの発明(AD2177)
孫の人格データを保持し続けたテペーニンは、人格データを収める身体の開発を続けていた。研究の結果、人格データはそのままでは自己を人間と認識できず、自己を人間と認識するためには物理的な身体が必要であることが判明していく。人体と同サイズの人形義体に人格データをインストールしても、人格はその大きさに耐えられず、拡散・消滅してしまう。
そこで、いつものプラモデルで作り慣れた1/35サイズの小型義体を制作して人格データをインストールしたところ、人格データは自身を人間と認識し、孫のゼロアと全く同じ振る舞いを見せた。テペーニン博士はこの小型義体を「ケルバー」と命名した。史上初のケルバーの誕生である。
人体の虚弱化により人類が西暦2300年には完全に地球から姿を消すと予測したテペーニンは、ケルバーの研究を人類の後継者プロジェクトとして進めた。そして個人的な趣味として、ケルバーの根幹属性にプラモデルを愛好する嗜好性をこっそりとプログラムした。人類の絶滅以上に、自分の愛好する趣味が絶滅することが耐え難かったからと伝えられている。
箱庭世界計画(AD2181〜)
AD2181年、テペーニン博士はケルバーを発表。人体虚弱化と人口増加問題を一挙に解決するプロジェクトとして、世界各国に箱庭世界計画を持ちかける。その骨子は次のとおりである。
- 全人類の意識をケルバーに移し、1/35に縮小された箱庭都市へと移住する
- 箱庭都市の維持コストは通常都市の1/1000以下
- その間にテラフォーミングが完了する火星への移住計画を進める
- 人格を抽出した後の肉体は専用装置で厳重に保管し、人類が再び生存可能となった暁にはケルバーで生活した記憶を注入して再生する——のちに「肉体回帰の約束」と呼ばれる誓約である
テペーニンはこのとき、ケルバーとして生まれ変わったゼロアをゼリックに引き合わせた。息子の復活に喜んだゼリックは計画への協力を快諾し、持ち前のリーダーシップで賛同企業を次々と増やしていく。AD2184年には最初の箱庭都市グロッフ(後のリザレクティア)が完成した。
当初は懐疑的だった人々も、ケルバーに移入すれば虚弱者でも健常者同様に活動でき、体の不調に悩まされず、快適な生活が送れることに惹かれ、移入者は増え続けた。先行した箱庭都市の成功により、箱庭世界計画は正式に人類存続計画として採用され、世界中で箱庭都市の建造が始まる。
最期(AD2199)
AD2199年、テペーニン博士は息子ゼリックと共に、箱庭計画終了後に全人類を乗せて火星へ旅立つ予定の超巨大移民船の機関部制作を、ラグランジュポイントで指導していた。そこに箱庭計画反対派のテロが発生し、機関部の建設プラントは大爆発を起こす。テペーニンは最後に残った一人用の緊急脱出ポッドに重傷で動けないゼリックを乗せ、自身は宇宙の藻屑と消えた。享年83歳であった。
後世への影響
埋め込まれた嗜好性とケルバーダイン文化
テペーニンがケルバーの根幹属性に埋め込んだプラモデル愛好嗜好は、AD2205年頃から箱庭都市でのプラモデル製作の流行として顕在化した。AD2212年には管理機構の調査によって嗜好性の埋め込みが判明したが、すでに除去は不能と確定している。この嗜好性は、塗装が機体性能を向上させる現象**RIC**の根源であり、AD2316年のケルバーダイン誕生に至るミキシングワールドの文化全体を方向づけた。
肉体回帰の約束
テペーニン博士は、AD2300年の箱庭計画完全始動を見ることなく生涯を終えた。博士が遺した「肉体回帰の約束」は、その実現を掲げるリザレクトと、肉体を捨てた新たな進化を掲げるエグゼクトという、現代の二大勢力の路線対立の核心であり続けている。
尊敬と顕彰
ミキシングワールドの根幹を作った偉人として、また生涯において家族を大切にしたその行いから、テペーニン博士はリザレクト・エグゼクトを問わず現在でも大きな尊敬を集めている。
MC0030年、エグゼクト終生大総統就任式典においてゼノヴァは、スキンを最後にテペーニン博士の姿へと変えて演説を行った。
ミキシングワールドの祖、テペーニン博士はどんなことがあっても息子であるゼリックを見放すことはなかった。リザレクトはこの世界の創造主の意思に反しているのだ!
── バトルストーリー第12話「エグゼクト統一宣言」
また、RIC理論を確立した天才シェラルド・グペインは「テペーニンの再来」と称された。箱庭都市スフィアエッグには博士の名を冠した「H・テペーニンリアルスケールモデル博物館」があり、旧人類時代の特殊遺跡「モー・ケイテン」からの発掘品を専門の職人「プロモデラー」が組み上げた収蔵品で知られる。テペーニン本人が制作したプラモデルは現存していない。
家族
- 父:ロシア系の分子生物学者
- 母:日本人
- 曽祖父(母方):プラモデル愛好家。そのコレクションがテペーニンの原点となった
- 妻:AD2140年結婚、AD2144年病死
- 息子ゼリック:AD2142年生まれ。確執と和解を経て箱庭世界計画を主導した
- 孫ゼロア:AD2165年生まれ。AD2175年の事故で肉体を失い、その人格データはAD2177年、史上初のケルバーとして再生された
記録
- 公式記事:ミキシングワールド列伝① H・テペーニン博士。再生構築機界の造物主
- 公式記事:ケルバーダインの世界「再生構築機界(ミキシングワールド)」成立の歴史
- 公式記事:再生構築機界歴史年表(AD2116〜AD2212の項)
- 公式記事:ミキシングワールドの住人、1/35の縮小された人類「ケルバー」とは?(1/35サイズの由来)
- 公式記事:ケルバーダインとは?(RICの起源)
- 公式記事:ミキシングワールド探索記② H・テペーニンリアルスケールモデル博物館
- 公式記事:ミキシングワールド列伝② シェラルド・グペイン(「テペーニンの再来」)
- バトルストーリー第12話「エグゼクト統一宣言」(バテスMX30、ゼノヴァによるスキン模倣と演説)
関連項目
- ケルバー(発明品)
- 箱庭世界計画(提唱した計画)
- RIC(埋め込まれた嗜好性に由来する現象)
- ケルバーダイン
- リザレクティア(最初の箱庭都市グロッフの後身)
- リザレクト/エグゼクト
- ターンオーバーデイ
- ゼリック/ゼロア
- ゼノヴァ/シェラルド・グペイン